動画生成AIは、テキストや画像から映像を作り出すAI技術です。初期は静止画を少しずつ動かす技術が中心でしたが、その後、映像全体の動きや時間的なつながりを理解するモデルが登場し、現在では音声と映像を同時に生成できるモデルまで進化しています。
ここでは、公開されているモデルを中心に、その進化を4つの世代に分けて紹介します。
動画生成AIを理解するための基本用語
動画生成AIには、画像生成AIとは異なるいくつかの用語があります。
- 生成方式: Diffusion(ディフュージョン/拡散モデル)など、映像を作り出す仕組み。
- 生成タスク: Text-to-Video(文章から動画)、Image-to-Video(画像から動画)、Video-to-Video(動画から動画)など。
- モデル構造: U-NetやDiT(ディット/Diffusion Transformer)など、AIが映像を処理するためのネットワーク構造。
- 時間方向の制御: フレーム間の動き、カメラワーク、キャラクターの動作などを制御する技術。
- 生成環境: ComfyUIやDiffusersなど、モデルを実際に動かすための環境。
第1世代(2023年):「静止画を動かす」時代
初期の動画生成AIは、画像生成AIの技術を応用し、静止画に時間方向の情報を追加することで動画を作る方式が中心でした。
Stable Video Diffusion(ステーブル・ビデオ・ディフュージョン)
公開時期:2023年11月
Stable Video Diffusion(SVD)は、Stability AIが公開した動画生成モデルです。
画像生成AIのStable Diffusionを基盤としており、静止画を入力して、その画像を動かすImage-to-Video方式に対応しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 既存の画像をもとに動画を生成できる
- 14フレーム版と25フレーム版を用意
- フレームレートを調整できる
- 画像生成AIの技術を動画生成に応用した初期の代表的モデル
ただし、初期公開版は研究用途を前提としており、現在の動画生成AIと比較すると、動きや映像の自由度には制限があります。
AnimateDiff(アニメートディフ)
公開時期:2023年8月
AnimateDiffは、既存の画像生成モデルに動きを追加するための技術です。
Stable Diffusionなどの画像生成モデルに専用のMotion Module(モーションモジュール)を組み込むことで、静止画だけでなく連続した映像を生成できるようにします。
主な特徴は次のとおりです。
- 既存のStable Diffusionモデルを活用できる
- LoRAなどの追加学習モデルと組み合わせられる
- キャラクターや画風を維持しながら動画を生成できる
- ComfyUIなどから利用できる
独立した巨大な動画生成モデルというより、画像生成モデルを動画生成に対応させる拡張技術として重要な存在です。
第2世代(2024年):「動画専用モデル」の時代
2024年になると、静止画生成モデルの拡張ではなく、動画生成そのものを目的とした大型モデルが次々に登場しました。
動画の時間的なつながりや、物体・人物の動きを学習するために、Transformerを利用したモデルが増えていきます。
CogVideoX(コグビデオエックス)
公開時期:2024年8月
CogVideoXは、中国の清華大学系研究チームTHUDMが公開した動画生成モデルです。
動画生成向けのDiffusion Transformer(DiT)を採用しており、文章から動画を生成するText-to-Videoに対応しています。
主なモデルには2Bと5Bのバージョンがあります。
- CogVideoX-2B:比較的小規模なモデル
- CogVideoX-5B:より大規模で高品質な生成を目指したモデル
- Image-to-Videoにも対応
- 動画の継続生成にも対応
後継のCogVideoX1.5では、最大1360×768の解像度や約10秒の動画生成に対応するなど、映像品質と生成能力が向上しました。
Mochi 1(モチ・ワン)
公開時期:2024年10月
Mochi 1は、Genmoが公開した約100億(10B)パラメータの動画生成モデルです。
独自のAsymmetric Diffusion Transformer(非対称拡散トランスフォーマー)を採用しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 文章から動画を生成できる
- 人物や物体の動きを表現できる
- プロンプトへの忠実度を重視
- Apache 2.0ライセンスで公開
ただし、初期モデルの出力は480pが中心で、アニメ表現よりも実写的な映像に適したモデルとされています。
LTX-Video(エルティーエックス・ビデオ)
公開時期:2024年11月
LTX-Videoは、Lightricksが開発した動画生成モデルです。
約20億(2B)パラメータという比較的小規模なモデルでありながら、Text-to-VideoとImage-to-Videoの両方に対応しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 約20億パラメータ
- 768×512の映像生成に対応
- 24fpsの動画生成
- 比較的少ない計算資源で動かせるように設計
- ComfyUIに対応
大型モデルが主流になりつつある中で、生成速度と扱いやすさを重視したモデルとして注目されました。
HunyuanVideo(フーニュアン・ビデオ)
公開時期:2024年12月
HunyuanVideoは、Tencentが公開した大規模動画生成モデルです。
約130億(13B)パラメータのDiffusion Transformerを採用し、映像の品質や人物の動き、プロンプトへの忠実度などを重視しています。
主な特徴は次のとおりです。
- Text-to-Videoに対応
- 高品質な人物・物体の動きを表現
- 大規模なTransformer構造を採用
- 後からImage-to-Video版も登場
高品質な映像を生成できる一方、初期モデルでは非常に大きなGPUメモリが必要でした。
第3世代(2025年):「高品質化と実用性」の時代
2025年には、動画生成モデルの性能が大きく向上しました。
特に、映像の一貫性、解像度、生成速度、画像から動画を作る機能などが進化しています。
Wan 2.1(ワン・ツー・ポイント・ワン)
公開時期:2025年2月
Wan 2.1は、AlibabaのWanチームが開発した動画生成モデルです。
Diffusion Transformerを採用し、Text-to-Video、Image-to-Video、Video Editingなど、幅広い生成タスクに対応しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 1.3Bと14Bのモデルを用意
- 文章から動画を生成
- 画像から動画を生成
- 動画編集にも対応
- 中国語・英語の文字を映像内に生成できる
特に1.3Bモデルは、約8.19GBのVRAMで動作する設計となっており、大型モデルと比較して導入しやすい点が特徴です。
Wan 2.2(ワン・ツー・ポイント・ツー)
公開時期:2025年7月
Wan 2.2は、Wan 2.1を進化させた後継モデルです。
大きな変更点は、Mixture of Experts(MoE/混合エキスパート)構造を動画生成に採用したことです。
MoEとは、複数の専門的なAI処理部分を用意し、処理内容に応じて使い分ける仕組みです。
Wan 2.2では、映像の大まかな構成を担当する部分と、細かなディテールを担当する部分を切り替えて処理します。
主な特徴は次のとおりです。
- 画質と動きの表現力が向上
- MoE構造による効率的な処理
- Text-to-VideoとImage-to-Videoに対応
- 5Bモデルと14Bモデルを用意
- キャラクターの動作を再現するAnimate版も登場
- 音声入力から映像を生成するSpeech-to-Videoにも対応
特にWan 2.2は、オープン系動画生成モデルの中でも重要なシリーズとなっています。
HunyuanVideo 1.5(フーニュアン・ビデオ・ワンポイントファイブ)
公開時期:2025年11月
HunyuanVideo 1.5は、Tencentが公開したHunyuanVideoの後継モデルです。
約83億(8.3B)パラメータに小型化しながら、映像品質と動きの一貫性を高めています。
主な特徴は次のとおりです。
- 約83億パラメータ
- Text-to-VideoとImage-to-Videoに対応
- 1080pへのアップスケーリングに対応
- 低VRAM環境向けの最適化
- 少ないステップ数で生成できる蒸留版も公開
初代HunyuanVideoと比較して、必要なGPUメモリを抑えながら高品質な映像を生成できるようになりました。
第4世代(2026年):「映像と音声の統合」の時代
2026年になると、動画生成AIは映像を作るだけでなく、音声や会話、環境音なども同時に生成する方向へ進化しています。
また、複数の画像や動画を参照しながら生成する機能や、長時間の映像を作る技術も発展しています。
LTX-2(エルティーエックス・ツー)
公開時期:2026年1月
LTX-2は、Lightricksが開発した映像と音声を同時に生成できるモデルです。
従来の動画生成AIでは、映像を生成した後に別のAIで音声を付ける方式も一般的でした。LTX-2は、映像と音声を一体的に生成する仕組みを採用しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 映像と音声を同時に生成
- 音声と映像のタイミングを同期
- ネイティブ4K出力に対応
- 最大50fpsに対応
- 最大10秒の動画生成
- 複数のキーフレームを使った映像制御
モデル全体では約190億パラメータで、映像側に約140億、音声側に約50億のパラメータを割り当てています。
MOVA(モヴァ)
公開時期:2026年1月
MOVAは、OpenMOSSが開発した映像と音声を同時に生成するモデルです。
映像と音声を別々に生成するのではなく、1つのモデル内で連携させながら生成する仕組みを採用しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 映像と音声を同時生成
- 人物の口の動きと音声を同期
- 多言語のリップシンクに対応
- 環境音や効果音の生成
- モデルの重みや推論コードを公開
- LoRAによる追加学習にも対応
特に、人物が話している映像や、映像内の動きに合わせた効果音を生成する用途で注目されるモデルです。
MiniMax H3(ミニマックス・エイチスリー)
公開時期:2026年
MiniMaxが公開した約330億(33B)パラメータの動画生成モデルです。
従来のText-to-VideoやImage-to-Videoだけでなく、画像・動画・音声など複数の情報を参照して映像を生成するマルチモーダル型のモデルです。
主な特徴は次のとおりです。
- テキストから動画を生成
- 画像から動画を生成
- 既存動画を参照した生成
- 音声と映像の同時生成
- 参照画像や音声を使ったキャラクター表現
- ComfyUIやDiffusersに対応
大規模なモデルですが、映像と音声を統合した生成能力を持つ点が特徴です。
LTX-2.5(エルティーエックス・ツー・ポイント・ファイブ)
公開時期:2026年
LTX-2シリーズをさらに発展させたモデルです。
約220億(22B)パラメータのモデルで、映像・音声の生成に加えて、複数の映像カットや高画質化などの機能を強化しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 映像と音声の統合生成
- 複数ショットの生成
- 最大4Kの高解像度出力
- HDR映像への対応
- 高速生成向けの蒸留モデル
- 画像やキーフレームを使った映像制御
単一の短い動画を生成するだけでなく、より複雑な映像制作を支援する方向へ進化したモデルです。
動画生成AIの世代別まとめ
| 世代 | 時期 | 主なモデル | 主な進化 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | 2023年 | SVD、AnimateDiff | 静止画を動かす |
| 第2世代 | 2024年 | CogVideoX、Mochi 1、LTX-Video、HunyuanVideo | 動画専用モデルの登場 |
| 第3世代 | 2025年 | Wan 2.1、Wan 2.2、HunyuanVideo 1.5 | 高画質化・高速化・制御性能の向上 |
| 第4世代 | 2026年 | LTX-2、MOVA、MiniMax H3、LTX-2.5 | 映像と音声の統合・高度な映像制御 |

